高血糖と腎機能の低下


「高血糖と腎機能の低下」

 高血糖になると、腎臓から過剰な糖を排出するために、糸球体の毛細血管が破壊されてしまいます。すると血液中のタンパク質が漏れ出してしまうため、その糸球体に血液が入れないように血管を閉じてしまいます。その結果、血液のろ過ができなくなります。

 糸球体は、左右の腎臓合わせておよそ200万個あります。ですから、高血糖によって次々と糸球体が破壊されていっても、腎臓のろ過機能が20%くらいに低下するまでは、何の症状も出ません。

 そして、「いくら寝ても疲れが取れない、身体全体が重だるい、頭痛や吐き気がする」などといった症状が現れたころには、すでに透析が必要なレベルにいたっていることが多いのです。

 腎機能の低下を防ぐ最大の秘訣は、血糖値の上昇を防いで「ヘモグロビンA1c」を7%未満に保つことです。

  ヘモグロビンA1cの正常値は5.8未満ですが、高血糖よりも低血糖のほうが命に関わる危険が高いため、健康な高齢者の目標値が7.0未満に変更されました。

 そして、認知症やADL(日常生活動作)が低下している人、ほかの病気や機能障害がある人、重症低血糖が危惧される薬剤を飲んでいる人などは、7.5~8.5未満が目標値とされました。(日本糖尿病学会2016年5月)

 

 老化物質であるAGEs(終末糖化産物)も、腎臓の糸球体を破壊する大きな原因です。

 ヘモグロビンA1cは、全赤血球のうち何%が「糖化」しているかを示す値です。糖化した赤血球がAGEsになって、血管の弾力性を失わせていきます。とりわけ細い血管が破壊されますから、腎臓の糸球体、目の網膜、足の血管などが破壊されます。その結果、腎障害、失明、脚の神経痛(壊疽・切断)といった糖尿病の合併症がおこるのです。